「 お子さんの写真は撮っていますか? 」こう問われてYESと答える方は多いでしょうが、その主な撮影機材は毎日持ち歩いているスマホですという方が多いのも現実だと思います。小さなお子さんと一緒だと着替えやオムツ、ぐずり防止のオモチャやおやつなど、どうしても荷物が多くなってしまうので、大きな一眼カメラを持ち歩けないという気持ちはとてもよくわかります。ですが、日々ものすごく速いスピードで成長していくこどもの記録をスマホ画質でしか残さないのは少し寂しくありませんか? 今回は、そんな荷物の多いパパさん、ママさんも安心! お家スタジオを作ってお子さんをかわいく撮る方法をお教えしましょう。
まず撮影場所は大体のご自宅で一番広くて、大きな窓があるリビングにしましょう。窓際の自然光が入るスペースがベストです。直射光が顔に当たると影が強く出てきつい印象の写真になってしまいますので、レースのカーテンを閉めて光をやわらげましょう。被写体であるお子さんの横顔か頭の斜め後ろに光が当たるようにし、レフ板を使ってお子さんの顔に光が反射するようにします。レフの当て方は、光をピンポン玉に例えると、レフ板でピンポン玉を跳ね返したときにお子さんの顔に飛ぶような角度を意識すると分かりやすいと思います。
小さい赤ちゃんは初めて見る白くて丸い布を怖がる子もいますが、筆者の経験上では逆に興味を持って向かって来る子の方が多い気がします。怖がる場合は少し遠くから当てて、赤ちゃんが慣れるまで近付けないようにしましょう。
使用するレンズは標準ズームレンズよりも明るい単焦点レンズのほうが簡単に明るくてボケの綺麗な写真を生み出してくれるのでおススメです。また、室内撮影なのであまり後ろに引けないことを考えると望遠画角よりも標準画角のほうが全身のカットも撮れて良いでしょう。
ねんねの赤ちゃんを撮るときは真上から撮るのではなく、自分が床に肘をつく位の低い斜めの位置から撮影しましょう。また構図も赤ちゃんの体で画面内に斜めのラインを作るようにすると、真っ直ぐに撮るよりも大きく赤ちゃんを写すことができます。撮影位置も真横からではなく、少し頭の側から撮ると頭の大きさが強調されて赤ちゃんらしい写真になります。このように、寝ている赤ちゃんを撮るときは‘斜め’を意識することがポイントです。
赤ちゃんは泣くのがお仕事です。泣いてしまったら撮影を中断してあやしてあげましょう。お腹が空いたりオムツが気持ち悪かったり寂しくて抱っこして欲しかったりと泣く理由は様々ですが、その欲求が満たされると今まで泣いていたのが信じられないくらいすっと泣き止むことも多いです。そんなときはまだ涙の粒が残っている表情も撮っておくと笑い顔ばかりのアルバムにもバリエーションが出ます。でもギャン泣きしているところを撮影し続けるのは赤ちゃんもかわいそうなのでやめてくださいね。
お家スタジオの中級編は敷いた布の上にカラフルな風船を散りばめてみましょう。これだけで写真の中に色が増えてポップなイメージの写真になります。布の上に寝転んで顔の周りに風船を集めれば華やかなアップの写真に、頬杖をついて体の周りに風船を転がせば雑誌で見たようなモデルさんごっこができます。
風船はふわふわとあちこちを転がりますが、それをお子さんと一緒に拾い集めることで遊びの要素が加わり撮影に緊張しやすいお子さんもリラックスすることができます。
お家スタジオの上級編は、これからもどんどん成長していくお子さんの成長記録を自宅で撮り続けてみたいと思う方はストロボと背景セットを揃えてみましょう。昔は大きなスタジオでなければ設置も収納もできないような大きな機材ばかりでしたが、最近では折り畳み式で場所を取らないスタンドと伸縮式クロスバー( 背景用の布などをかけるための棒 )の背景セットや、本格的なライティングができるストロボが2灯セットなどでお安く販売されています。背景紙は専用の物を購入してもいいですし、初級編で使用した布を背景セットのクロスバーにかけると簡単に背景を作ることができます。
ストロボ撮影のメリットは沢山ありますが、こども撮影の場合は自宅の定常光だけでは動き回る素早いこどもの動きを写し止められないときにその恩恵を感じられることでしょう。
たとえば習い事をしているお子さんはお家での練習風景を撮影してあげましょう。撮るだけではなく「 こんなにかわいらしくポーズが取れているよ 」、「綺麗に足を上げられているね 」と上達していることを褒めながら撮った写真を見せてあげると習い事への意欲が向上して一石二鳥です。撮影のコツは、ピントはカメラに近いほうの目に合わせて、動いている手や足はほんの少しだけぶれる速さのシャッタースピードで撮ると、全部がピタッと止まっているよりも動いている躍動感を演出できます。ただし、止まっているポーズはしっかりと写し止められるシャッタースピードで写し止めましょう。
露出計というとフィルムカメラの時代の物…というイメージの方もいらっしゃると思いますが、周囲の明るさに引っ張られることなく確実に被写体の露出を明示してくれるとても便利なアクセサリーです。特にストロボ撮影の時はデジタルカメラのシャッターを何回も押して光の状態を見ていると時間のロスになりますしモデルさんのテンションも下がってしまいます。それを回避するために、ぜひ露出計に頼ってみてください。
ストロボを使うとなると色々とライティングを試したくなりますが、こどものポートレートの場合はカーテンを閉め切らずに自然光とミックスして使うとナチュラルな写真になります。背景セットを使ってアップを撮る場合は、1灯は髪の毛の艶感を出すために高い位置から見下ろすように、もう1灯はカメラに近い斜め前から顔を照らすようにし、背景紙の後ろに窓が来るようにすると弱い逆光で撮影する形になるので明るくてふんわりとした優しいポートレートに仕上げることができます。
お子さんが動き回る場合や、室内全体を明るくしたい場合は天井に発光部を向けてバウンスして使用しましょう。お子さんがいる場所によっては光が届きにくく弱かったり、ちょうど光の芯が当たってしまって影ができたりということもありますので、カメラのシャッターを切るよりも素早く露出を計れる露出計を使って露出を見ながら撮影しましょう。こども撮影はお子さんの機嫌を取ること、笑顔をもらうために褒めて気分を上げさせることなどやることがいっぱいなので、使える便利な物は何でも使って快適な撮影環境を作りましょう!
さてここで、お家スタジオを使った撮影ネタをひとつ。おじいちゃんやおばあちゃん、お友達からプレゼントを頂いたら、お子さんと一緒の写真を撮ってお礼に贈ってみてはいかがでしょうか? その場合のカットはかしこまってお子さんとプレゼントを一緒に写すよりも実際に遊んでいるシーンのほうが自然で楽しい写真になります。撮影時は普段のお子さんの表情が出るようにまずは好きに遊んでもらって、徐々にプレゼントとお子さん両方が写るように誘導しましょう。間違っても「 ○○さんに写真送るんだからプレゼント持ってにっこり笑って! 」なんてそのものずばりな言い方はしないでくださいね。こわばった硬い笑顔の写真ばかりになってしまいますよ。
最後にこども撮影で一番重要なことをお教えしましょう。お子さんを撮るときのNGワードは「 こっち向いて 」と「 笑って 」です。動きや表情を制限されたり無理強いされたりするのは大人でも嫌なことですよね。それを自由奔放なお子さんに強いてもお互いの関係がギスギスするだけで楽しい写真は撮れません。お子さんをかわいらしく撮る一番のコツは自分も楽しみながら撮ることです!
制作協力:スタジオグラフィックス