WEB写真上達講座
写真撮影用フィルターの選び方
(一社)日本写真映像用品工業会では、日本市場に安価なフィルターで撮影に影響を及ぼしかねない製品が流通している事が確認されたため、ユーザー保護の目的から流通しているフィルターの性能・品質検査を実施いたしました。
検査結果を下記に発表させて頂きますので、フィルターの使用につきましては充分注意して頂くようお願いします。
低品質のフィルターを使用すると、せっかくの高性能なレンズやカメラの性能を十分生かせず、意図した写真が撮れない場合があります。
市場には日本のフィルターブランド製品の偽造品、類似したパッケージの模造品や、表示した性能を満たさない粗悪品も流通しています。
そもそも偽造・模造は違法であり、フィルターは外観からは品質を確認しにくいので、信頼できるブランドを選択するのが安全といえます。
問題内容
- ① 低品質フィルターは、写真撮影用フィルターとして適した加工がされていないものであり、特性(効果)が得られなかったり悪影響を与えてしまう素材を使用している。
- ② 国内ブランドと酷似したパッケージを使用しているものもある。
- ③ パッケージには、品質・性能とは異なる表記がされているものもある。
検査項目
<UVフィルター分光特性比較>
UVフィルターは可視光線域ではない紫外線域の波長の光線をカットする事により、遠景撮影時にクリアな画像が得られるが、低品質フィルターでは紫外線域の光線が有効にカットされていないためUVカットフィルターの効果が得られないことがあります。(全ての撮影でUVカットの効果が得られるわけではなく、撮影条件や撮影環境などにより効果が得られないときもあります。)
可視域400nm~700nmの平均透過率 |
|
---|---|
国内標準レベルUV(マルチコート) |
97.5% |
低品質UV(ノンコート) |
90.6% |
低品質フィルターでは一般的な反射防止コートが無いため、反射が強くなり透過率が低くなっている。
<フィルター解像確認検査装置によるUV、C-PLフィルター解像比較>
コリメーターによる解像確認検査を行うと低品質フィルターでは解像度が劣り、画質の低下が懸念されます。
国内標準レベル UVフィルター (マルチコート付) |
低品質 UVフィルター |
国内標準レベル C-PLフィルター |
低品質 C-PLフィルター |
低品質のC-PLフィルターではこのようにチャートにピントが合わず解像不足が顕著なものがあり、望遠系のレンズに特に解像不良の影響が出る恐れがあります。
<C-PL(サーキュラーPL)フィルター実写による色味の比較>
この低品質品ではフィルターが黄色味を帯びているため、色彩を鮮やかに表現するC-PLフィルターの役割に支障があります。全体に黄色味掛った(色かぶり)画像になる事が懸念されます。
国内標準レベル UVフィルター (マルチコート付) |
低品質 UVフィルター |
この低品質のフィルター現品を見ると、偏光膜の色が黄色味掛かっており、撮影するとその影響があり、上の写真のように黄色味の色かぶり写真となります。
【フィルター選びのポイント】
フィルターの選択基準に3つの要素があります。
フィルターを購入する際にはこれらにもこだわってみてください。
■フィルターガラス
ガラスを精密研磨することで面精度の高い平行平面な材料を使用します。平面性が崩れていたり、平行度が出ていない場合、画質の劣化に繋がってしまいます。
また、ガラスの質も重要で、低品質品ではフロートガラス(未研磨ガラス)と呼ばれる、窓ガラス等に使われる建材の品質の物が多く、画質に悪影響を及ぼす恐れがあります。光学製品に適したガラスを使用したものは画質への悪影響が極めて少なくなります。
■コーティング
ガラスと空気の境目では光の反射が起こり、透過光が減少します。
コーティングを施していないガラスではガラスの片面で約5%、フィルターの場合はガラスの表裏がありますので、10%程度も光量が減少してしまいます。また、光の影響で写真にゴーストやフレアといった悪影響を及ぼすことがあります。特に逆光での撮影では悪影響が顕著に現れることがあります。
この問題を避けるため、ガラスの表面に施すのがコーティングです。
モノコートといわれる単層のコートを施した場合、2~3%の光量減少に抑えることができます。
一般的な保護フィルターに施されるマルチコート(多層コーティング)では片面反射が1%、さらに上位のコーティングを施したものは片面0.5%以下、0.3%以下といったレベルまで高められています。これにより画質の劣化は格段に減少します。
■フィルター枠
単にフィルター枠の厚さのみではなく、取り付けるためのネジの精度が良く、快適に取り付け・取り外しが出来るか、またレンズにフィルターガラスが接触しないよう考慮されているかなどもフィルター枠の重要なポイントです。
「保護フィルター」は使用率が高く、常に付けた状態で撮影することが多いので、品質にもこだわりたいものです。保護フィルターは、レンズの画質に悪影響が無く、レンズを守り、さらにレンズの日々の手入れにレンズそのものを拭くのではなく、保護フィルターを拭くことでメンテナンスが容易になることでも有用です。
せっかくのレンズの「写り」を犠牲にすることが無いよう、上記のようなポイントを意識して保護フィルターを選びましょう。
保護フィルターは「プロテクトフィルター」といった紫外線カット効果のないものと、「UVフィルター」という紫外線カット効果のあるもの、さらに「スカイライト」といった晴天下の色のバランスを取るためにわずかなピンク色をしたものなどがあります。
フィルターはレンズ保護以外に、用途別にさまざまなものが発売されていますが、良い画質を得るためには、上記に述べたように、良い品質のフィルターを選ぶことが大切です。