これだけ沢山、いろいろなタイプの写真を拝見できるコンテストはあまりないと思います。記録的なもの、報道的なもの、創造的なもの、日常的なもの、非日常のものetc. . . 一口に写真といってもいろいろな分野があり、同じ土俵での比較は困難でした。最終的に、選んだ写真を見直してみると、キーワードは「ときめき」だと思います。撮影者のときめきと、見る私のときめきが一致したもの、ということでしょうか。セレクト時には絵柄とタイトルを見るだけですが、終わってからコメント欄を見てみると、写真から私が受け取った想いと、実際撮影者が感じている想いがリンクしているものが多かったように感じました。想いを映像化するとき、最終的なイメージがはっきりしている方の方が、試行錯誤できると思います。どう見せたいか、どんなイメージを作り上げたいのか、撮影前に考えることも上達のポイントになるかもしれません。
太陽の光が参道の奥から差し込んで、黄金に輝く色と光の印象が素晴らしいです。一瞬で目に飛び込んできました。出塩文殊堂のあじさい参道だそうですが、時間と光を選ぶことによって、特別感のある作品になっています。奥に、人をぼかすことで、奥行き感や、物語を感じさせます。時にはこうして人を待つということも、物語を完成させるためには必要なことです。よく考えられて撮影されているけれども、さりげない絵作り、心惹かれました。
木道の先は、濃霧で見えない夜の景色。それだけでもドラマチックですが、霧が晴れた上部は星々の世界。異なる2つの世界による違和感、不思議な感じが魅力的で、ずっと見ていたくなる作品です。実際の撮影は、暗い濃霧の中で、いつ現れるかわからない星空を待つという、時間の感覚がなくなりそうでかなり怖い感じだったのではないかと思います。可能性にかけ、待つこと。それも作品作りにおいて大切なことだと思います。
地吹雪が光に染まってなんとも言えない美しさですね。青空も顔を出し、ブルーからオレンジに変化していく色彩の中、歩く人たちは体を縮こめるような格好で、実際は相当過酷な気象条件なのでしょう。画面の中に、いろいろな条件が混在しているとともに、小さく入れた人物によって、スケール感が出ています。圧倒的な自然の力を表現した一枚です。
ぽつぽつと見える秋の彩り、黄色、オレンジ色、赤色。グリーンの面の中に、紅葉は少しずつ散らばっていて、少しというのがむしろ印象的な志賀高原の風景です。ふわふわと、霧が紅葉を囲むような部分で構図を作ることで、画面中心に視線を誘導するとともに、紅葉の色彩をより際立たせています。
黒の中に浮き上がる綿毛の色彩の印象は、タイトル通り、花火みたいです。どうやって撮影したのかなと想像するのも楽しい作品ですね。黒紙や偏光板、PLフィルターを使ったと、コメントで種明かししてくださっていますが、どれくらい試行錯誤されたのか、完成度がとても高いと思います。最終形に向かって、作り上げていく楽しさも感じられる作品です。
シャッターチャンスと、レンズワークが見事に生かされた作品です。12-24ミリという超広角レンズによって、5〜6メートルもある鳥毛、羽熊のしなりを全体的に画面に封じ込められているだけでなく、湾曲して見せることで、独特の迫力も表現することができました。お祭りの流れや様子をわかっていてはじめて撮れる作品だと思います。
ストロボを使ったモデル撮影の絵柄をたくさん見るようになりました。こうして水を使った撮影では、モデルさんと、作品のイメージを共有し、作り上げていく作業になります。何度も繰り返しチャレンジされているのでしょう。水しぶきが星のよう散りばめられて、宇宙のような印象です。ストロボの使い方も、髪の毛や衣装を透過させたり、部分的に光あったりと、イメージ通りだと思います。
今年は酷暑でしたが、子供たちは元気いっぱいですね。夏らしく青空が見えるいいお天気の光の中、ずぶ濡れのお子さんの表情は目をつぶっているものの笑顔いっぱい。顔をつたう水の様子や、しぶきの様子は臨場感があって、気持ちよさそうです。お子さんだけでなく、背景に他のお子さんたちの様子をぼかしながらも見せることで、より、その場の雰囲気を伝えています。
夜の富士山のシルエット、田んぼへの写り込み、走る車の光跡、星の光跡、ホタルが舞う光たち。これでもかというほど役者が揃っていて、全てが良い状態で、ちょっとびっくりしました。人工物も、自然の景色と調和していて、何の違和感もなく、むしろ、こんな場所でホタルが舞うのだなと嬉しくなりました。何日も通って出会った景色だそうです。
大阪府高槻市で撮影。ベニカミキリがジャンプした瞬間です。 花に来て、飛んでは別の花へ行き、また飛んでは別の花へ行きを繰り返していたので、何度か撮影できましたが、空中にいる瞬間を撮影だきたのは、これ一枚でした。
わあ、すごい!ベニカミキリが飛んでいます!2センチにも満たない小さな昆虫ですが、飛翔のタイミングでなおかつこのピントってがんばりましたね。赤い羽根の、さらに内側の羽は、ぶれていて、躍動感があります。じっくり見ていると、手足の様子も可愛らしいです。背景はボケながらも、少し白い花の様子も見えていいバランスです。
明るい光に包まれて、幸せな感じ。全体に光溢れ、白に近い色で画面を構成されているのと、明るめの露出で、ちょっと眩しくも感じますが、そのまぶしさがこれからの喜びを表しているようです。ポジティブで清々しい春のイメージですね。桜に直接触れずに、ふんわり包み込む両手の形が優しくていいですね。
企業の写真撮影部門勤務後、独立。 「彩り写真家」として様々な被写体を独特の色彩感覚で切り取る。 女性限定写真教室Atelier Kawaiiphoto、EOS学園、クラブツーリズム、NHK等TVなどでの講師実績、個展やグループ展などでの作品発表多数。
書籍「露出を身につければ写真が変わる! 光と色の撮り方教室(朝日新聞出版)」など。 公益社団法人日本写真家協会、公益社団法人日本写真協会会員。